第四巻の第三編の
ピエールの夢に登場する老人の「地球儀×水滴×人生」の文脈がとっても美しい。
チャップリンの映画「独裁者」で登場する地球儀で遊ぶシーンが頭にうかびました。
以下、「戦争と平和 トルストイ 第四巻 第三編より」抜粋
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『ちょっとお待ち』老人はこう言って、ピエールに地球儀を見せた。
その地球儀は、一定の大きさを持たず、生きて揺動している球であった。球の表面は、たがいにぴったりと密着した水滴から成っていた。そして、これらの水滴はすべて、動き、うつり、あるいは数滴がひとつに溶けあったり、あるいはひとつからいくつにもわかれたりするのだった。各水滴は、できるだけふくれて、すこしでも多くの空間を占めようとするのだが、同じことを望んでいる他の水滴がそれを圧迫して、ときにはつぶしてしまったり、ときにはいっしょに溶けあってしまったりするのだった。
「そら、これが人生というものだ」 と、老人の教師は言った。
《なんて単純で、はっきりしてるんだろう》とピエールは考えた。
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時間の経過とともに、水滴が自然に流れているように思える。命の輝きを放ちながら。
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